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このところ、クローン技術の問題が、各方面で取りざたされています。国際的なコンセンサスをベースにしたモラルや法規制の方がいっこうに進展せぬまま、遺伝子工学の事も含め、テクノロジー的には確実に着々と進歩しつつあるようです。
そういう中で独立独歩系の某国家や、さる大金持ち実業家をパトロンとする某科学者などは国際的な非難を無視して、人クローン実験を間もなく成功させる*注1)と意気込んでいるようです。ああしかし、なんて解りやすい! やっぱ人類、いっぺん滅びんとアカンとちゃうかと、何故か関西弁で突っ込みたくなります。(笑)
それはともかく、人クローンが成功したとしても、出来上がったクローンが、オリジナルと同一人格になるわけでは無いことは当然です。そもそも人の個性は、極めて多面的だと聞きました。人はそれぞれ先天的な傾向を備えてはいるけれど、具体的にどのような性格の人間になるかと言えば、かなりフレキシブルらしいのです。 つまり個性は、経験と環境によって変わりうるのです。
個々の人格は発達心理学によれば、大体12歳位までには固まるそうです。個性の核にあって自己表現の根拠となる概念を、交流分析では「人生脚本」と呼ぶ*注2)ようです。この人生脚本が異なれば、同じクローン人間でも、全く異なった人物になってしまいます。解りやすい例として、一卵性双生児のケースが考えられます。双子は全く同じ顔かたちをしていても、やっぱり別人になります。 何故なら例え同じ屋根の下に暮らしたとしても、片方は年長者として、もう片方は年下として異なった扱いを受けるからです。こうした体験によってそれぞれの人生脚本は、全く異なったものになってしまいます。
ですから双子と友達になった人達は、始めは混乱するけれども、つきあっているうちにすぐにどっちがどっちだか解るようになると聞きました。ということはクローン人間も、後天的な教育環境などによって、それぞれ全く異なった考え方、スキルを持つ人物になりうるわけです。そうなれば当然、オリジナルの人物とは、表情や仕草などの印象が異なった人物になります。*下記<補足3>「遺伝子のメチル化」の項参照
では、オリジナルと全く同一人格のクローンを造ることは可能でしょうか?
ところがクローン人間のために、オリジナルがたどった過去の経験と環境を用意する事など、ほぼ不可能です。例えピカソのクローン人間を造って英才教育を施したところで、二度とピカソが生まれる可能性は無いと聞きました。やはり人間とは、どんな人物であっても、それは悠久の時に唯一無二の貴重な存在。天上天下唯我独尊は、すべての人に当てはまる事実です。 d(ーー;)p
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聞いたところでは、ヴァジリキは、バジレリスカのクローンということです。 つまりヴァジリキは、イバラードに複数存在します。 我々の住む世界で考えれば、当然ヴァジリキは、バジレリスカとは全く違った女の子になるはずです。(人間の我々から見て、多少変な所があったとしても) 左図):「水辺の二人(部分)」 |
しかしこれがイバラードだと、そうとも言えないのです。
その根拠はイバラードという極めて特殊な環境。
イバラードの空間は、人の思念に反応しやすいという特徴があります。
空間自体が、人の考えに応じて、自在に姿を変えるのです。それはスタニスラフ・レムのSF小説「ソラリスの日のもとに」の、ソラリスの海に似ています。
何故こんなことが起こりうるのか、興味深いところです。僕たちの世界では、どんなに一生懸命に何かを思ったり考えたりしても、人の手を介さない限り、いきなり何かが形になって空間に現れることはありません。
ですからイバラードの大気には、物質と非物質との中間に位置する、何かがあるのではないかと思うときがあります。ガンダムの世界に「ミノフスキー粒子」が存在するように、イバラードの世界にも、人工的に造られた人の思念に反応する粒子が存在するのかも知れません。
さて、バジレリスカほどの強烈な存在の思念なら、おそらくイバラード全域に影響を与えうると考えられます。あるいはバジレリスカ以外にも、このような存在が複数おり、環境に様々な影響をかなり与えているものと考えられます
ヴァジリキはバジレリスカのクローンですから、おそらく簡単に、その思考と相互シンクロ出来ると考えられます。あるいはヴァジリキ本人は、その事を知らない可能性もあります。ひょっとしてバジレリスカからの思念の干渉を、自分の記憶や思考と混同しているかも知れません。それは、「ブレードランナー」のレプリカント、レイチェルが、記憶の操作をされていたのと似ています。
いずれにしてもバジレリスカの方は、イバラード全土のヴァジリキを、何処に居てどんな状態であるかを把握していると想像できます。 そしてバジレリスカは、その気になれば、ヴァジリキを自分の分身として動かすことも難しくは無いと思えます。
つまりヴァジリキとは、バジレリスカをコアサーバーとした、サイコ(思念)・ネットワークと考えられます。いわば、PCが無線LANで繋がった状態です!
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ヴァジリキの性格や気質を考える時、何となく感じることがあります。ヴァジリキは、人間社会に極めて疎(うと)い状態で育ったように見えるのです。 ということはヴァジリキは、最初に関わった人(男性?)によって、ようやくインターフェイス(人格)が完成されるのかもしれません。 右図):「竜と見た塔(部分)」 |
つまりヴァジリキが出会った相手によって、気の強い女の子になったり、おっとりした女の子になったり、いろいろと変わりうるわけです。
更に、ヴァジリキの才能やスキルはどうなんでしょう?
ヴァジリキには、バジレリスカから移された、いろんな能力(アプリケーション)が秘められていると考えられます。 但しこれらのアプリケーションは、ヴァジリキ自身が全て保有(バンドル)していない可能性があります。
ヴァジリキは、全てのアプリケーションを保有するかわりに、それぞれのキーコードを持っているだけなのかもしれません。つまり何かのきっかけによって、そのアプリケーションのいずれかを使う必要に迫られたとき、初めて彼女のキーコードが解除されると言うわけです。そしてその都度、バジレリスカと思念ネットワークを通して、ヴァジリキへ能力(アプリケーション)が転送されるのかもしれません。
これと全く同様な例が、映画「マトリックス」に出てきます。
ヘリの操縦は出来なかったトリニティーが、マトリックス外でハッキングしている仲間からヘリ操縦スキルを転送してもらい、仲間を救い出すシーンです。(この説明では、映画を見てない人は分からないかもしれませんが。汗; )
ではヴァジリキが、そのキーコードを解除するきっかけとは、どのようなものでしょう? 例えば「マトリックス」の様に危険に遭遇して、何らかの力を目覚めさせる必要に迫られるといった事態も考えられます。
しかし、その様なケースは極めて少ないと考えます。何故ならヴァジリキは、イバラードの何処にいようと、バジレリスカの強力な庇護の元にあるからです。滅多なことで、彼女らが危険な目に会うことは無いでしょう。
ヴァジリキが、新たに何らかのスキル(アプリケーション)を必要とするのは、やはり誰かとの出会いがきっかけになるでしょう。そう言う事って、我々の現実の世界でもよくあります。例えば外国の友人が出来てその国の言葉を話す必要に駆られる時。彼女とのデートに車の免許が必要な時。 誰かを好きになっておいしいご飯を食べさせたい時、などect.
こうして、ヴァジリキが必要に応じて呼び出すアプリケーションは、出会った人(男性?)の影響を受けます。……ということは、選択されたキーコードは、相手のパワーやポテンシャルに応じて、詳細なパーミッションが設定されているはずです。
つまり高い能力を持つ人には、それなりに高いスキルで応えるというわけです。
何故ならその方が相手の安全の為であり、ひいてはヴァジリキ自身の身を守ることになるからです。
こうしてヴァジリキが、イバラードに複数存在しても、結果的にはそれぞれ全く違う人物になると思われます。と言うことを逆に見れば、すべてのキーコードおよびパーミッションが解除されると、最終的にバジレリスカそのものになってしまうわけです!
さて こうして考えると、ヴァジリキとは、バジレリスカにふさわしい男性を捜すエージェント*注3)なのかもしれません。
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ところで、もし何らかの理由でバジレリスカ・ネットワークからフリーになった、スタンドアロンのヴァジリキが居たら面白い。 つまり、ネットワークポートが故障したヴァジリキが存在した場合ですね。 多分この故障は、ヴァジリキ側には、自覚がないと思う。まあ他のヴァジリキが、一緒に居たら話は別だと思いますけど。 左図:「エクスプローラー(部分)」 |
こう言うケースでは、故障したヴァジリキは「何かが変だ」と思いながらも、その原因が分からないで困惑する。ただしヒューマン・インターフェイスは、彼女自身が保有している基本OSなので 、良い人と無事に出会いさえすれば、彼女のキャラクターは問題なく瞬時に形成されるでしょう。
しかし彼女が必要とするスキル(アプリケーション)が、バジレリスカから全く転送されないことになります。しかもバジレリスカが補完していた記憶も、ほとんど伝わらない。なので、自分がどこから来たかも良く知らないことになります。
ただし海から来た事だけは知っている。 何故なら海に関する知識が、メモリーに数多く入っていると思えますから。そしてまた、何か重要な任務があったはずと感じるはずです。しかし何をしたらよいか、全くわからないという状態になります。
なので結局、全く無能でぼうっとしたヴァジリキが出来上がってしまうわけ。
この娘の出来ることと言ったら、ただ寝て食べるだけ。(笑)
まあしかしこんなヴァジリキでも、人格は自立しています。
ですから、あたふたしながらも、普通の女の子として育ってゆくでしょう。
そういうヴァジリキを想像すると、何だか可愛い。
……え? そんな娘なら、現実にどこでもいるって? (;^^A…
そしてある日、事件が起きる!
バジレリスカと竜の一族に反感を持つ者達が、思念ネットワークにサイコウィルスをまき散らす。 このことでヴァジリキのほとんどが混乱に陥って倒れ、バジレリスカは窮地に追い込まれる。
この時バジレリスカを救ったのはなんと! 出来損ないでぐうたら娘の、スタンドアローン・ヴァジリキだった!
……なんてね。(^^;) ちょっと、サイバーなイバラード話でした。
これって桂正和とかのラブコメ漫画の読み過ぎ?(爆
2002年 9月 4日: 記
2003年9月21日:追記
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<補足3>:遺伝子のメチル化 | |
以下は08年7月5日放送、NHK「サイエンスZERO」から得た情報です。 親から子供に遺伝子が伝わる時、子供は両親の遺伝子から、一定の確率に従って取捨選択し、個体を形成します。さらに遺伝子コピーのエラーも加わって、結局は親とは異なった形質を持つようになります。この遺伝子伝達の微妙な誤差が起きる根拠を、環境への適応、もしくは種の多様性の保証で説明する学者もいます。 |
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地球上の生物は、動植物を含めて非常に多様な姿を見せる。しかしそのすべての遺伝情報は以下、たった4種の塩基の組み合わせで成り立っている。 さて、最近の研究で判明した成果の一つが、遺伝子のメチル化だ。 ところで遺伝子のメチル化を促進する能力は、DNA そのものが保有している。
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実は、この話を書いて間もなく「世界で初めて、人クローンを複数生み出すことに成功した」というニュースが流れました。しかもなんとそれに成功したのが、某宗教団体だったというから驚きです! |
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注2):交流分析と人生脚本 | |
交流分析とは、TA(Transactional Analysis)とも呼ばれる心理療法。アメリカのエリック・バーン博士 (1910年〜1970年)によって考案されました。 ところで、みなさんは交流分析の名は知らなくても、エゴグラムなら聞いたことがあるかもしれません。エゴグラムは、バーン博士の弟子であるジョン・デュセイ博士によって開発されました。個々人の心理状態を、下記の5パターンに分けて解析し、それぞれの強度をグラフに表します。 (1)親の自我(Parent) ・CP:Critical Parent=批判的な親心(家父長的) (2)大人の自我(Adult) ・A:Adult=合理的な大人の心 (3)子供の自我 (Child) ・FC:Free Child=無邪気な子供の心 このエゴグラムについては、一般的向けに、性格占いとして沢山の本が出版されているので、ご覧になったことがあるかもしれません。TA(交流分析)は他にも、グループカウンセリングという手法を造り上げました。そして数多くの自己啓発セミナーを生み出す素地を造りました。 |
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ヴァジリキの目的が何かは、はっきりしません。ただ間違いなく、一つだけ言えるあります。それはヴァジリキの成長を誰かが待っているということです。 「竜のコロニーの巣別れ」(今は工事中なので、サマリーをご覧下さい) |
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2002年 9月 4日: 記
2003年9月21日:追記
2006年1月20日:修正
2008年7月2日:修正
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