area iblardアイコン

Subject No.1
竜の人の謎


ヴァジリキは、電気クラゲの夢を見るか?


人魚姫の道(部分)

このページの内容

1)クローンって、全く同一人物になるの?

2)バジレリスカ・ネットワーク

3)ヴァジリキというシステム

4)もしネットワークフリーのヴァジリキが存在したら


<補足1>井上先生より寄せられたコメントの要約

<補足2>「目韻(めいん)」について

<補足3>遺伝子のメチル化
<注釈>

以下のお話は、以前「小立野大学・公開セミナー」に書き込んだものです

 

1)クローンって、全く同一人物になるの?

 このところ、クローン技術の問題が、各方面で取りざたされています。国際的なコンセンサスをベースにしたモラルや法規制の方がいっこうに進展せぬまま、遺伝子工学の事も含め、テクノロジー的には確実に着々と進歩しつつあるようです。
  そういう中で独立独歩系の某国家や、さる大金持ち実業家をパトロンとする某科学者などは国際的な非難を無視して、人クローン実験を間もなく成功させる*注1)と意気込んでいるようです。ああしかし、なんて解りやすい! やっぱ人類、いっぺん滅びんとアカンとちゃうかと、何故か関西弁で突っ込みたくなります。(笑)

 それはともかく、人クローンが成功したとしても、出来上がったクローンが、オリジナルと同一人格になるわけでは無いことは当然です。そもそも人の個性は、極めて多面的だと聞きました。人はそれぞれ先天的な傾向を備えてはいるけれど、具体的にどのような性格の人間になるかと言えば、かなりフレキシブルらしいのです。 つまり個性は、経験と環境によって変わりうるのです。

 個々の人格は発達心理学によれば、大体12歳位までには固まるそうです。個性の核にあって自己表現の根拠となる概念を、交流分析では「人生脚本」と呼ぶ*注2)ようです。この人生脚本が異なれば、同じクローン人間でも、全く異なった人物になってしまいます。解りやすい例として、一卵性双生児のケースが考えられます。双子は全く同じ顔かたちをしていても、やっぱり別人になります。 何故なら例え同じ屋根の下に暮らしたとしても、片方は年長者として、もう片方は年下として異なった扱いを受けるからです。こうした体験によってそれぞれの人生脚本は、全く異なったものになってしまいます。
 ですから双子と友達になった人達は、始めは混乱するけれども、つきあっているうちにすぐにどっちがどっちだか解るようになると聞きました。ということはクローン人間も、後天的な教育環境などによって、それぞれ全く異なった考え方、スキルを持つ人物になりうるわけです。そうなれば当然、オリジナルの人物とは、表情や仕草などの印象が異なった人物になります。*下記<補足3>「遺伝子のメチル化」の項参照

  では、オリジナルと全く同一人格のクローンを造ることは可能でしょうか?
  ところがクローン人間のために、オリジナルがたどった過去の経験と環境を用意する事など、ほぼ不可能です。例えピカソのクローン人間を造って英才教育を施したところで、二度とピカソが生まれる可能性は無いと聞きました。やはり人間とは、どんな人物であっても、それは悠久の時に唯一無二の貴重な存在。天上天下唯我独尊は、すべての人に当てはまる事実です。 d(ーー;)p

 

2)バジレリスカ・ネットワーク

  聞いたところでは、ヴァジリキは、バジレリスカのクローンということです。 つまりヴァジリキは、イバラードに複数存在します。
 では、ヴァジリキは、どの程度バジレリスカと似ているのでしょう?
  また、バジレリスカの能力の、どの程度を備えているのでしょう?
  性格はどうでしょう?

  我々の住む世界で考えれば、当然ヴァジリキは、バジレリスカとは全く違った女の子になるはずです。(人間の我々から見て、多少変な所があったとしても)

 左図):「水辺の二人(部分)」

  しかしこれがイバラードだと、そうとも言えないのです。
その根拠はイバラードという極めて特殊な環境。

 イバラードの空間は、人の思念に反応しやすいという特徴があります。
 空間自体が、人の考えに応じて、自在に姿を変えるのです。それはスタニスラフ・レムのSF小説「ソラリスの日のもとに」の、ソラリスの海に似ています。
  何故こんなことが起こりうるのか、興味深いところです。僕たちの世界では、どんなに一生懸命に何かを思ったり考えたりしても、人の手を介さない限り、いきなり何かが形になって空間に現れることはありません。
  ですからイバラードの大気には、物質と非物質との中間に位置する、何かがあるのではないかと思うときがあります。ガンダムの世界に「ミノフスキー粒子」が存在するように、イバラードの世界にも、人工的に造られた人の思念に反応する粒子が存在するのかも知れません。

 さて、バジレリスカほどの強烈な存在の思念なら、おそらくイバラード全域に影響を与えうると考えられます。あるいはバジレリスカ以外にも、このような存在が複数おり、環境に様々な影響をかなり与えているものと考えられます
 ヴァジリキバジレリスカのクローンですから、おそらく簡単に、その思考と相互シンクロ出来ると考えられます。あるいはヴァジリキ本人は、その事を知らない可能性もあります。ひょっとしてバジレリスカからの思念の干渉を、自分の記憶や思考と混同しているかも知れません。それは、「ブレードランナー」レプリカントレイチェルが、記憶の操作をされていたのと似ています。

  いずれにしてもバジレリスカの方は、イバラード全土のヴァジリキを、何処に居てどんな状態であるかを把握していると想像できます。 そしてバジレリスカは、その気になれば、ヴァジリキを自分の分身として動かすことも難しくは無いと思えます。
  つまりヴァジリキとは、バジレリスカをコアサーバーとした、サイコ(思念)・ネットワークと考えられます。いわば、PCが無線LANで繋がった状態です!

 

3)ヴァジリキというシステム

 ヴァジリキの性格や気質を考える時、何となく感じることがあります。ヴァジリキは、人間社会に極めて疎(うと)い状態で育ったように見えるのです。
 ひょっとしてヴァジリキ人生脚本ブートされた(空白の状態になった)存在なのかも知れません。例えるなら、生命維持のための基本OS (カーネル)だけインストールされてはいるものの、インターフェイスはまだ未設定な状態のPCに似ています。

 ということはヴァジリキは、最初に関わった人(男性?)によって、ようやくインターフェイス(人格)が完成されるのかもしれません。

 右図):「竜と見た塔(部分)」

  つまりヴァジリキが出会った相手によって、気の強い女の子になったり、おっとりした女の子になったり、いろいろと変わりうるわけです。

  更に、ヴァジリキの才能やスキルはどうなんでしょう?
  ヴァジリキには、バジレリスカから移された、いろんな能力(アプリケーション)が秘められていると考えられます。 但しこれらのアプリケーションは、ヴァジリキ自身が全て保有(バンドル)していない可能性があります。
  ヴァジリキは、全てのアプリケーションを保有するかわりに、それぞれのキーコードを持っているだけなのかもしれません。つまり何かのきっかけによって、そのアプリケーションのいずれかを使う必要に迫られたとき、初めて彼女のキーコードが解除されると言うわけです。そしてその都度、バジレリスカ思念ネットワークを通して、ヴァジリキへ能力(アプリケーション)が転送されるのかもしれません。
  これと全く同様な例が、映画「マトリックス」に出てきます。
  ヘリの操縦は出来なかったトリニティーが、マトリックス外でハッキングしている仲間からヘリ操縦スキルを転送してもらい、仲間を救い出すシーンです。(この説明では、映画を見てない人は分からないかもしれませんが。汗; )

 

 ではヴァジリキが、そのキーコードを解除するきっかけとは、どのようなものでしょう? 例えば「マトリックス」の様に危険に遭遇して、何らかの力を目覚めさせる必要に迫られるといった事態も考えられます。
 しかし、その様なケースは極めて少ないと考えます。何故ならヴァジリキは、イバラードの何処にいようと、バジレリスカの強力な庇護の元にあるからです。滅多なことで、彼女らが危険な目に会うことは無いでしょう。
 ヴァジリキが、新たに何らかのスキル(アプリケーション)を必要とするのは、やはり誰かとの出会いがきっかけになるでしょう。そう言う事って、我々の現実の世界でもよくあります。例えば外国の友人が出来てその国の言葉を話す必要に駆られる時。彼女とのデートに車の免許が必要な時。 誰かを好きになっておいしいご飯を食べさせたい時、などect.

 こうして、ヴァジリキが必要に応じて呼び出すアプリケーションは、出会った人(男性?)の影響を受けます。……ということは、選択されたキーコードは、相手のパワーやポテンシャルに応じて、詳細なパーミッションが設定されているはずです。
 つまり高い能力を持つ人には、それなりに高いスキルで応えるというわけです。
 何故ならその方が相手の安全の為であり、ひいてはヴァジリキ自身の身を守ることになるからです。

  こうしてヴァジリキが、イバラードに複数存在しても、結果的にはそれぞれ全く違う人物になると思われます。と言うことを逆に見れば、すべてのキーコードおよびパーミッションが解除されると、最終的にバジレリスカそのものになってしまうわけです!

 さて こうして考えると、ヴァジリキとは、バジレリスカにふさわしい男性を捜すエージェント*注3)なのかもしれません。

 

4)もしネットワークフリーのヴァジリキが存在したら

  ところで、もし何らかの理由でバジレリスカ・ネットワークからフリーになった、スタンドアロンのヴァジリキが居たら面白い。 つまり、ネットワークポートが故障したヴァジリキが存在した場合ですね。

  多分この故障は、ヴァジリキ側には、自覚がないと思う。まあ他のヴァジリキが、一緒に居たら話は別だと思いますけど。

左図:「エクスプローラー(部分)」

 こう言うケースでは、故障したヴァジリキは「何かが変だ」と思いながらも、その原因が分からないで困惑する。ただしヒューマン・インターフェイスは、彼女自身が保有している基本OSなので 、良い人と無事に出会いさえすれば、彼女のキャラクターは問題なく瞬時に形成されるでしょう。
 しかし彼女が必要とするスキル(アプリケーション)が、バジレリスカから全く転送されないことになります。しかもバジレリスカが補完していた記憶も、ほとんど伝わらない。なので、自分がどこから来たかも良く知らないことになります。
 ただし海から来た事だけは知っている。 何故なら海に関する知識が、メモリーに数多く入っていると思えますから。そしてまた、何か重要な任務があったはずと感じるはずです。しかし何をしたらよいか、全くわからないという状態になります。

  なので結局、全く無能でぼうっとしたヴァジリキが出来上がってしまうわけ。
  この娘の出来ることと言ったら、ただ寝て食べるだけ。(笑)

 まあしかしこんなヴァジリキでも、人格は自立しています。
 ですから、あたふたしながらも、普通の女の子として育ってゆくでしょう。
 そういうヴァジリキを想像すると、何だか可愛い。
 ……え? そんな娘なら、現実にどこでもいるって? (;^^A…

そしてある日、事件が起きる!
バジレリスカ竜の一族に反感を持つ者達が、思念ネットワークサイコウィルスをまき散らす。 このことでヴァジリキのほとんどが混乱に陥って倒れ、バジレリスカは窮地に追い込まれる。
この時バジレリスカを救ったのはなんと! 出来損ないでぐうたら娘の、スタンドアローン・ヴァジリキだった!

 ……なんてね。(^^;) ちょっと、サイバーなイバラード話でした。
  これって桂正和とかのラブコメ漫画の読み過ぎ?(爆

2002年 9月 4日: 記
2003年9月21日:追記

 


<補足1>:井上先生より寄せられたコメントの要約
 上記のお話を書くきっかけは、井上先生の日記「共有ファイル(2002年9月2日)」でした。その後このヴァジリキ話に、先生からコメントをいただきました。
 これには興味深い内容が含まれています。そこで以下に要約しました。
1)

イバラードの人魚姫は、長い髪をまとめることなく背中に垂らしている。
これは思念の受信状態を意味していて、バジレリスカとネットワークしているという話につじつまが合う。
イバラードで髪の毛は、人の思念を発信したり受信したりするアンテナの働きをする。なので魔法使いはたいてい、髪を長く延ばしている。
但し空間に飛び交う雑念に邪魔されないよう、通常は髪を束ねていることが多い。 ニーニャも普段の生活をしているときは、長い黒髪を小さくまとめているが、魔法を使うときだけその髪を下ろす。

2)

バジレリスカの前に立つとその圧倒的な力故に、とても耐えられない。
その強力な思念の前には、ほとんどの人が無力になる。

3)

何故かニーニャだけは、バジレリスカの思念の影響を受けない。
ただし、その理由は謎である。

4)

バジレリスカの思念ネットワークに進入して、ハッキングする事は困難。
進入者はたちまち、強力な攻撃にさらされるからだ。 同様に、ウイルスを混入することもきわめて難しい。従ってバジレリスカの敵がいたとしたら、ネットワークの目韻(めいん)
*注4 を取ろうとするだろう。

*注4):目韻(めいん)については、以下<補足2>をご参考に。

 

<補足2>:「目韻(めいん)」について
 これと同じ用語が「仙術超攻殻オリオン」に登場します。

 このお話には、難飛芸韻倒(ナビゲイター)とか出次多流(デジタル)とか、科学用語に漢字を当て字した変な用語が沢山出てきます。
 特に韻(いん)については、以下のように複雑な使い方をしています。

  • 念度(ねんど)1万韻度(いんど)
  • 韻念(いんねん)
  • 星の韻力(いんりょく)
  • 韻積体(いんせきたい)
  • 設定韻具有(セッティング)
  • 韻階(いんかい=オクターブ)
  • 10韻(時間の尺度を意味する)

  右図)「仙術超攻殻オリオン」士郎正宗著 青心社刊

 については、このように説明しています。

 人の思念は、陰子と陽子の多彩な組み合わせで出来た綱(コード)である。
 その複雑さを韻度で表し、その融合強度を念度で表す。

 そして目韻(メイン)とは、システム全体をコントロール可能な、支配的で強い思念の力を持つ存在のことを指すようです。これを平たく言えば、コンピューターシステムの集中管理オペレーターの様な存在かと。

 このことから、上記で井上先生が仰る「目韻(めいん)を取る」とは、つまり「バジレリスカ・ネットワークを乗っ取る」という意味になるのでしょうか?
 もしそんなことが可能ならば、なかなかスリリングなことになるでしょう。

 なお「仙術超攻殻オリオン」イバラードの影響がうかがえます。上記にあげた難飛芸韻倒(ナビゲイター)の他、召解像(メゲゾウ)も登場します。しかも召解像(メゲゾウ)は、具留(ゲル)化すれば問題ない」とか、召解像(メゲゾウ)は、対法師用の禁呪である止念法(しねんほう)の一種」といった、イバラーダーをくすぐる台詞が出てきます。この止念法「イバラード物語」に登場する、止念砲(パルカー砲)のパロディです。

 「仙術超攻殻オリオン」は、思念の力がテクノロジーとして、物理的に機能している世界を描いています。そのテクノロジーを支える技術理論をこのコミックでは、仮学(かがく)と呼んでいます。 これはある意味、イバラードの世界観を、士郎さんなりに解釈して描いとも思えるのです。井上先生と士郎さんとは、ちょっと意外な組み合わせに見えますが、実は同じ青心社からコミックを出版しているという共通点があります。

 ちなみに士郎さんは「コミック版・攻殻機動隊2」で、上記に書いたヴァジリキバジレリスカの関係に近いネットワークを描いています。コアとなる本体=荒巻素子と、手足となる複数のデコット=義体との関係がそうです。それはTVアニメ「攻殻機動隊SAC」の、人形遣いの概念とも共通しています。


<補足3>:遺伝子のメチル化

 以下は08年7月5日放送、NHK「サイエンスZERO」から得た情報です。

 親から子供に遺伝子が伝わる時、子供は両親の遺伝子から、一定の確率に従って取捨選択し、個体を形成します。さらに遺伝子コピーのエラーも加わって、結局は親とは異なった形質を持つようになります。この遺伝子伝達の微妙な誤差が起きる根拠を、環境への適応、もしくは種の多様性の保証で説明する学者もいます。
 これと異なりクローンは、オリジナルと寸分違わぬDNA を伝えることが可能。
にも関わらず、やがては徐々に異なった形質を持つようになります。それは何故でしょう? その理由の一つとして、以下の研究が参考になると思い掲載しました。

 地球上の生物は、動植物を含めて非常に多様な姿を見せる。しかしそのすべての遺伝情報は以下、たった4種の塩基の組み合わせで成り立っている。
  A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)
 この塩基配列がいわゆる遺伝子=DNAで、二重螺旋構造になっていることはよく知られている。かつてはヒトゲノムの解析、即ち人間のDNA配列を完全解明することが、遺伝子科学の究極の目標とされた。しかし人のDNAの塩基配列は、おおよそ30億と言われる。あまりに途方もない数であることから、90年代半ばまで、20世紀内のゲノムの完全解明は無理と考えられていた。しかし各国の最先端研究所は、多額の資金を投入して成果を競った。そして驚くことに21世紀直前、ヒトゲノムは、ほぼ解明された。
 しかしこの成果に一番乗りした某研究所は、ゲノム情報の特許権を主張。これに社会的影響を懸念する科学者やモラリストから、大きな批判が起きた。ところが、コンピューター処理能力の増大や検査方法の進歩によって現在、ヒトゲノムは、DNAの塩基配列を調べるだけなら比較的簡単な装置で、しかも短時間で解明出来るようになった。と同時に、上記のゲノム情報の特許話もどこかに消えたようだ。そもそも人のゲノムは、遺伝子を提供した人物の個人情報であって、例え分析に多額の資金を投入したとしても、特許を得られる性質のものではない。いずれにしてもこうした成果を受け、既に犯罪捜査では、遺伝子パターン解析が犯人検挙の精度を上げる上で大きな成果を上げている。
 現在の遺伝子研究はさらに進んで、それぞれのDNA情報が個々にどのような作用を及ぼすかも、かなり解明された。そして同時にDNAが全て、個体内で利用されるわけでは無い事も分かっている。その取捨選択がどのように行われるかは、まだ分からないことが多く、遺伝子治療も含め、その解明が世界中で進められている。

 さて、最近の研究で判明した成果の一つが、遺伝子のメチル化だ。
遺伝子のメチル化とは、DNA配列C(チミン)に、メチル基(-CH3)がくっつくと、その部分の遺伝情報がワンセットまるまる発現を抑制される現象である。
番組では青いアサガオが、同じ株でありながら、白い花が混在する例を挙げていた。白いアサガオは、青色を発色するDNA がメチル化されたことで、発色しなかったことを示している。
  さらにもう一つ、ピロリ菌に感染した人は、胃ガンのリスクが高くなる例を上げていた。実はこれまでその因果関係は、よく分からなかった。ところが最近の研究により、ピロリ菌に感染した人は、ガン抑制遺伝子が、かなりの高確率でメチル化されていることが判明したのだ。これとは逆に、特定遺伝子のメチル化が減少することで発症する病気もあるという。従って今後は予防医療という観点から、特定遺伝子のメチル化異常値診断が、大きく貢献すると考えられている。

 ところで遺伝子のメチル化を促進する能力は、DNA そのものが保有している。
しかし、それが遺伝子の何処に起きるかは、後天的条件に左右される。このことを説明するのに、番組では一卵性双生児の例をあげていた。一卵性双生児は、同塩基配列のDNAを持つ。しかし長い人生を経ると、メチル化される箇所は全く異なる。なので幼時にそっくりだった兄弟も、老年では双子に見えない例も多いという。
  つまりDNAのメチル化は、同一のDNAを持っていても、経年によってそれぞれ形質が異なってくる理由を科学的に証明したことになる。このことからクローンを造っても、オリジナルと同じにならないことは、もはや明確であろう。

番組の情報はこちら↓:NHK サイエンスZERO、2008年7月5日放送

第216回放送 「遺伝子を操る不思議な仕組み DNAのメチル化」

 
2008年 7月 13日:記

<注釈>
 

注1):クローン人間が、ついに生まれた?

実は、この話を書いて間もなく「世界で初めて、人クローンを複数生み出すことに成功した」というニュースが流れました。しかもなんとそれに成功したのが、某宗教団体だったというから驚きです!
このニュースがもたらした衝撃は、単に人クローンというタブーを冒した事だけが理由ではありません。究極の不妊治療というタブー、さらに不幸な事故で子供を亡くした親が、同じ子供を再生させるという、三重のタブーを冒していたからです。
このニュースは世界中を駆けめぐり、やがては多大な疑念と共に何時しか消えてゆきました。はたしてあれは、真実だったのでしょうか?(^^;)

元の本文に戻る

  注2):交流分析と人生脚本
 

交流分析とは、TA(Transactional Analysis)とも呼ばれる心理療法。アメリカのエリック・バーン博士 (1910年〜1970年)によって考案されました。
バーン博士は人の心理が、ある状態に囚われているとき、生涯同じような失敗を繰り返すことに気付きました。そして人が無意識のうちに従っている人生のシナリオを、「人生脚本」と名付けました。そして個々人がより良く生きるためには、この人生脚本そのものをより良く書き改めることが必要だと説きました。

ところで、みなさんは交流分析の名は知らなくても、エゴグラムなら聞いたことがあるかもしれません。エゴグラムは、バーン博士の弟子であるジョン・デュセイ博士によって開発されました。個々人の心理状態を、下記の5パターンに分けて解析し、それぞれの強度をグラフに表します。

 (1)親の自我(Parent) 

 ・CP:Critical Parent=批判的な親心(家父長的)
 ・NP
:Nurturing Parent=養育的親心(母親的)

 (2)大人の自我(Adult)

 ・A:Adult=合理的な大人の心

 (3)子供の自我 (Child)

 ・FC:Free Child=無邪気な子供の心
 ・AC
:Adapted Child=順応した子供の心

このエゴグラムについては、一般的向けに、性格占いとして沢山の本が出版されているので、ご覧になったことがあるかもしれません。TA(交流分析)は他にも、グループカウンセリングという手法を造り上げました。そして数多くの自己啓発セミナーを生み出す素地を造りました。
アニメ「エヴァンゲリヲン」でも、登場人物の心理描写に、TAを応用しているのが感じられます。特に物議を醸したTV放送の最終回は、明らかにグループカウンセリングを反映しています。

元の本文に戻る

 

注3):ヴァジリキは、バジレリスカにふさわしい男性を捜すエージェント?

 

ヴァジリキの目的が何かは、はっきりしません。ただ間違いなく、一つだけ言えるあります。それはヴァジリキの成長を誰かが待っているということです。
そこでもしヴァジリキが、バジレリスカと同等の存在にまで成長してしまったら、いったいどうなるかと考えました。この話については、別項としてまとめてあります。もしお読みになるのなら、以下へ

 「竜のコロニーの巣別れ」(今は工事中なので、サマリーをご覧下さい)

元の本文に戻る

 

<この項、終わり>

2002年 9月 4日: 記
2003年9月21日:追記
2006年1月20日:修正
2008年7月2日:修正