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Subject No.3
ニーニャについて

イバラード・トリニティー


飛行士のカフェ(部分、1998年作)

イバラード御三家

 ニーニャの家系

 (1)ニーニャのおじいさんの謎
 (2)ニーニャの家系の悲劇
 (3)ニーニャが果たした役割

 ホ・ウエン家

 (1)ホ・ウエン家の能力とミストラルケイブ
 (2)めげゾウに関する考察
 (3)タキオが果たした役割

 ノナ家

 (1)「ノピサ」という称号
 (2)ノナ家とニーニャの家系との関係
 (3)イバラード円卓会議
イバラード三位一体説(トリニティー)
ニーニャの人物像
 (1)おじいさんが引退してからのニーニャ
 (2)現在のニーニャの役割
 (3)最後の謎、ニーニャの特殊能力
 (4)ニーニャって、たぶんこんな人

 


<イバラード御三家>

 イバラードサーガのヒーローやヒロインを想像するのは、なかなか面白そうです。 イメージは果てしなく広がるのですが、ここでは以下の家系の人達に絞ります。
 それはこの家系が、イバラードの歴史に大きく関わったと考えられるからです。

登場人物

家 名
ニーニャ 家系の姓は不明
タキオ ホ・ウエン家
イ・ノナ氏 ノナ家

 前章でも書きましたが、この御三家は共にイバラードを創造したクリエイターの意志を正当に受け継いだ、サクセサーだったと考えられます。 では御三家それぞれが果たした役割とは、何だったのでしょう?
 余談ですが、御三家の関係からめげゾウの由来も推測してみました。
 さすがにここまで来ると、妄想(=暴走)かもしれませんが……。

 

ニーニャの家系

 「イバラード物語」では、ニーニャの家系の姓名がわからりません。
 それは何故?  単に物語として、書く必要が無かったから?
 どうにもそうは思えません。
 むしろそこに、ニーニャの家系の秘密が隠されているようです。

 

(1)ニーニャのおじいさんの謎

 始めに、どうしても触れなくてはならないのが、ニーニャのおじいさんです。
 結論から言えば、ニーニャのおじいさんは、イバラード動乱期〜イバラード共和国成立までに活躍した人だったと考えています。
 では、その役割は何だったのでしょう?
 彼は自由商業国家(=「イバラード共和国」)建国に尽力したと推測します。ひょっとすると、イバラード共和国初代大統領になれた人物だったかもしれません。

 では、どんな魔法を使っていたのでしょう?
 おそらく凄腕の(しかも強硬な)、武闘派系の魔法使いと推測します。 それもかなり破壊的な力の持ち主だったのではないでしょうか。実はこの破壊的な魔力こそが、ニーニャの家系の特徴だったと考えます。こうした力の背景があってこそ、混乱の中から民主的なイバラードが誕生したと思うのです。他にも武闘派系の魔法使いは大勢いたと思えます。そうしたなかでも特にニーニャの家系は、統率力と優れた戦闘力とを兼ね備えた家系だったでしょう。

 

(2)ニーニャの家系の悲劇

  強力な力は、イバラードの平和をもたらしもしたけれど、同時に多くの犠牲を伴ったかもしれません。ひょっとしてニーニャの両親(つまり彼の息子か娘)は、この戦いの中で命を落とした可能性も考えられます。 もしそれが事実なら、彼の痛手と喪失感はあまりに大きかったはずです。であるなら晩年「めげぞうを見て、力をなくした」事を理由に、魔法を封印したことにも納得がいきます。

下図:ニーニャのおじいさん 「イバラード物語」より

 「イバラード物語」では、ニーニャのおじいさんの名前がありません。呼び名が、ニーニャのおじいさんではイメージが限定されてしまうし、物語としても扱いにくく感じます。 これはつまり、彼が魔法と共に自分の名前すら封印してしまったことを意味しているのかも知れません。それほどに彼の心の闇は深いのでしょう。
 ニーニャのおじいさんは、どことなくアーサー王の円卓の騎士の一人、魔法使いマーリンを思い起こさせます。マーリンは晩年、地中深く眠ってしまいました。

 

(3)ニーニャが果たした役割

 さてニーニャは、家系の能力をしっかり受け継いでいると考えられます。魔法使いの能力は、学習による後天的な努力によるところもあるでしょうが、その大半は体に流れる血によって、先天的に受け継がれると考えます。ニーニャは特に、破壊力の強いおじいさんの力をそのまま受け継いでいるのではないかと思われます。

 しかしニーニャの若さから推測して、彼女がイバラードの歴史に関わった時期はそんなに長くないと考えられます。彼女には、おじいさんが活躍していた時代の記憶が、いくらかあるのではないでしょうか。あるいは物心ついたときには、既に否応なしに戦いに巻き込まれていた可能性も想像できます。幼いながらも、その高い能力故に特殊な役割を果たしていたかもしれません。
 ひょとして彼女の両親がいない原因には、その魔法が深く関わっているかも知れません。それは幼いニーニャにとって、とてもつらい体験だったはずです。となると、ますますニーニャの家系の悲劇的な状況が想像されます。
 こうした戦いの果てにおじいさんが自ら能力を封印したとき、同時に彼女の(と言うよりニーニャの家系そのものの)魔法の力も、イバラードには必要の無いものになってしまった訳です。それ以来ニーニャは、自分の本当の能力を人に見せることを避けているのかもしれません。

 

ホ・ウエン家

 「イバラード物語」には、ニーニャに負けず劣らず、強い魔法の力を持つ美しい魔女としてタキオが登場します。タキオの家系(ホ・ウエン家)は、イバラードの歴史の中でどんな役割を果たしたのでしょう?
 ニーニャのおじいさんの引退の契機となっためげゾウについても、ホ・ウエン家との関係も含めて、以下、さらに大胆に推理します。

(1)ホ・ウエン家の能力とミストラルケイブ

 ホ・ウエン家の能力は、タキオの得意とする魔法から推測出来ます。これについて「イバラード物語」では、「ソルマの復元を得意とする」と紹介されています。

 タキオの能力を考える上で重要なのは、彼女が所有しているミストラルケイブです。
 この大がかりな施設は、様々なソルマを拡大したり、合成したり、裏返したりすることが出来るようです。このことからホ・ウエン家は、代々ソルマの加工を専門とする家系だったと考えられます。そしてイバラード開拓期には、生活に適した環境を創り出す上で貢献をしたと考えられます。

右図):ソルマを創り出すタキオ 「イバラード物語」より

 ミストラルケイブは、巨大なシンセスタの塊で出来ています。ホ・ウエン家が長年に渡って造り上げ、代々伝えてきた一族の財産です。そして現在はタキオが管理しています。

 シンセスタは極めて貴重な鉱石で、しかもこの構造物を造り上げるのに、何百年もの何月を要したとされます。つまりこれほど貴重な設備を、年齢の若いタキオが管理しているという事は、それだけタキオの優れた能力を表しています。

 ミストラルケイブの中では、空間が外とは異なり、ある種の酩酊感を味わうようです。その強い効力故に通常の人では中に入るのも叶わないと聞きました。

 左図):ミストラルケイブ 「イバラード物語」より

 

(2)めげゾウに関する考察

 タキオの家族は、「イバラード物語」では触れられていません。
 でもイバラードの動乱期に、何らかの役割を果たしたことも推測されます。
 さてここで、ちょっと面白い想像をしてみましょう。
 それはめげゾウが生まれたいきさつです。

下図):めげゾウ 「イバラード物語」より

 めげゾウは、イバラード動乱期に出現したと考えられます。それも何者かによって、秘密裏に生み出されたとも考えられます。 と言うのもめげゾウが、イバラード動乱を沈める最終的な手段になったと考えられるからです。

 めげゾウは出現と共に荒ぶる心も高揚する心もひっくるめて、すべての魔法使いに脱力感をもたらします。 このような状態では、如何なる勇者も戦い所ではなかったと考えられます。 もしめげゾウがイバラード動乱期に現れていたら、それ以降は戦闘が激減していったはずです。(特に魔法使い同士の)
 それは戦いに明け暮れる荒んだ心ほど、特に大きな効果を発揮したでしょう。一般市民にとっては無益な戦いを避けることで、一種の安全弁の様な役割を果たしたはずです。つまりめげゾウは、戦いを終わらせることを望んだ魔法使い達の、集合無意識が生み出した、いわば最終兵器だったのかもしれません。

 さてそうなると、めげゾウを創り出したのは誰でしょう?
 なんとも大胆な推理ですが、ホ・ウエン家だったと仮定します。武闘派であったニーニャ一族に対して、ホ・ウエン家厭武派(反戦派)だったと思われます。イバラードの生活環境を創り出すことを生業としてきた一族からみれば、時に破壊的なニーニャの家系は、受け入れがたかったはずです。あるいはニーニャの家系ホ・ウエン家との間には、政治的な確執もあったかもしれません。
 しかしめげゾウイバラードに出現したことによって、ニーニャのおじいさんは、武力が貢献する時代は終わったことを理解したはずです。そして自分が果たすべき役割も、無くなった事に気付いたに違いないのです。それゆえに彼は、自分の力を封印し、同時に家名さえ封印して地下へ潜ったとは考えられないでしょうか?

 

 (3)タキオが果たした役割

 このようなイバラードの政変は、少なくともニーニャが10歳ぐらいまでに起きたと考えられます。なおタキオは、おそらくこの時代には生まれていなかったか、誕生したばかりだったと思われます。タキオニーニャの年齢差は、おそらく5〜6歳ぐらいでしょう。仮に生まれていたとしても、タキオの若さを考慮すれば、この時代のことをほとんど覚えていない可能性が大きいです。

 タキオについて、ひとつ付け加えておきたいことがあります。
 もしホ・ウエン家めげゾウを創造したとすれれば、彼女には耐性があると思えることです。
のみならず彼女は、魔法使いの中で唯一めげゾウを操作できる魔女かも知れません。

 しかし、彼女がめげゾウを操ることは無いでしょう。何故ならイバラードではめげゾウの存在はタブー視されているからです。 つまり他言無用の禁術というわけです。

右図):タキオと彼女のカルラ 「イバラード物語」より

 

ノナ家

 さて最後にノナ家は、どんな役割を果たしていたのでしょう?
 前章の「イバラード(王国から自由主義国家へ)」で、 イバラード革命はあったのか、旧イバラード国王は何処へ行ったのか、という話をしました。実はイバラードの消えた王族の正体は、このノナ家かもしれなのです。

(1)「ノピサ」という称号

 ノナ家イバラードのシンボルであると同時に、極めて特別な存在です。その特殊さ故に、例え動乱期であっても、野心を抱いた者がいたとしても、誰も侵すことの出来ない存在だったと考えられます。というのもノナ家は、イバラードに必要な特殊能力を持っていると推測出来るからです。

 ノナ家の特殊能力は、イバラード時空の安定を保つ力です。
 このためノナ家イバラード創世記以来、極めて重要な役割を受け継いできたことが考えられます。
 そのことについて「イバラード物語」の中でも、ノピサ(空間の安定をもたらす者)の称号が、代々受け継がれてきたと語られています。

 このことから、一つの仮設が浮かび上がります。つまりこの「ノピサ」の称号こそが、すなわちイバラード王族の証だったのではないでしょうか。

 左図):ノピサの後継者キ・ノナ 「イバラード物語」より


 

(2)ノナ家と、ニーニャの家系との関係

 とは言えなんでもありのイバラードですから、ノナ家が久しく安泰であったとは考えにくい。一時は、かなり危険な時もあったでしょう。おそらくそれを守ってくれたのが、ニーニャ一族だったのではないでしょうか。

 ラオ・シンノナ家を守った一人かも知れません。
 ラオ・シンは謎の多い人物(猿?)ですが、今でもノナ家と、家族ぐるみのつきあいがあるようです。
 年齢的に、イ・ノナ氏はおそらく動乱期を知っていると思えますし、まだ若かったとは思います。あるいは、ニーニャのおじいさんや、ラオ・シンと共に闘ったこともあるかもしれません。多少は空間を扱うことによって、ノナ氏も戦闘能力を発揮出来たと思われます。

 右図):ラオシン 「イバラード物語」より

 ノナ家の持つ破壊的な力は、タルーラ(ミ・ノナ)ブラウジー(コ・ノナ)が時折見せる、危なっかしい力からも伺えます。しかし本来ノナ家は、戦いを好まない一族でしょう。むしろ安定した時代にこそ、その能力を発揮できる家系です。そしてその能力は、新しい世代のノピサ(=キ・ノナ)に受け継がれてゆくのが見て取れます。

 左図):タルーラとブラウジー 「イバラード物語」より


  

(3)イバラード円卓会議

 イ・ノナ氏は、イバラード安定期になってイバラードの舵取りを任された一人かと思えます。彼が、イバラード円卓会議のメンバーであることは「イバラード物語」でも伺うことが出来ます。そしてノナ氏は、この円卓会議で大きな発言権を持っているようです。

 これは極めて注目すべき事です。何故ならノナ家旧イバラード王家であり、イバラード政変クーデターだったとしたら、そんな権利を持つはずがないからです。クーデターの場合、旧政権の担い手は死刑か国外放免、少なくとも政治の表舞台からは消し去られるのが普通でしょう。

右上図):ノナ氏 「イバラード物語」より

 このことはイバラードの政変を推理する上で、大事なヒントとなります。
 すなわちイバラードの政変とは、実はクーデターではなくて、王政から市民議会への、穏やかな政権委譲ではなかったかと考えられるのです。それ故にノナ家は、その後も政治の場で、重要な役割を与えられていると推測されます。

 ところで、イバラード円卓会議とは、何でしょう?
 その実体は「イバラード物語」を見ただけではわかりません。ただ、イバラードの重要な政策を決定する場であると推測出来ます。それとノナ氏がメンバーであることがヒントになります。つまり円卓会議とは、旧イバラード王朝関係者で構成する貴族院のようなものと推測出来ます。あるいは、行政諮問委員会かも知れません。
 そもそもイバラード議会は、シンセネットワークによる直接民主制度です。なのに直接顔を合わせてテーブルを囲む円卓会議の存在自体かなり特殊です。つまりハイソサエティ・メンバーによる、サロンであるとも考えられます。

 

イバラード三位一体説(トリニティー)

 さて、こうしてイバラード御三家それぞれの性格と役割を見てくると、改めて気付くことがあります。それはサクセサー(継承者)が、クリエイター(創造者)から何を引き継ぎ、どんな役割を担ったのかはっきりと見えてくることです。特に ノナ家ホ・ウエン家は、車の両輪のようにイバラードの安定と創造を司る、強力な一族だったと考えられます。

 さらにこの両家に対して、破壊の力を持つニーニャの家系の役割を対比させて考えると面白い事に気付きます。そもそもニーニャの家系は、極めてユニークです。何故ならその破壊力は、存在している物を消滅させるけれども、同時に新たに何かを生み出す力をも与えるからです。例えるならタロット死神のカードに似ています。死神のカードが示唆するのは終焉。しかしリバース(逆)は再生を意味します。

家 名 能力・役割 主役となった時期
ホ・ウエン家 世界の創造と拡大 イバラード創世期
ニーニャの家系 世界の破壊と再生 イバラード動乱期
ノナ家 世界の存続と安定 イバラード安定期

 こうしてみると、三家の関係は見事にトリニティ(三位一体)が確立しています。
 そして時代が変わる毎、交互にその主役を移してきたと考えられるのです。この三家はこれからもずっと永遠に回る車輪のように、その主役を交代してゆくのかも知れません。そしていずれまたニーニャの家系が再び、重要な役割を果たす時代がやって来るのかも知れません。 でも「イバラード物語」の登場人物で、そんなことを望む者はいないでしょう。

 

ニーニャの人物像

 ここまでイバラードの歴史と、イバラード御三家の役割を推理してきました。
 その中でニーニャについてはすでに、幾つかお話ししました。改めてここでもう一度、ニーニャの人柄について整理します。ずいぶん遠回りした割に、肝心のニーニャの謎が、あまり解明されたとは言えませんが……。

(1)おじいさんが引退してからのニーニャ

 イバラード安定期となった以降も、ニーニャが何らかの役割を果たして来た可能性は否定できません。引退したおじいさんに代わり、それを引き継ぐべき両親がいなかった彼女は、ニーニャの家系を代表して重要な任務に関わったかもしれません。本来は武闘派系の魔法使いであっても、オールラウンダーな能力を発揮する彼女は、発足して間もないイバラード王国〜共和国に必要だったと思えます。
 ただしそれも長い年月ではなかったでしょう。ニーニャはわりと早々に政治の表舞台から引退したと思えます。 前述したように彼女は、自分の魔法を使う気が無かったと推測出来るからです。彼女が表舞台で役割を果たしたのは、20代中頃まででしょう。それ以降は今の小さなお店で、慎ましく暮らしてきたと考えられます。

 

(2)現在のニーニャの役割

 ニーニャは現在イバラードで、何らかの役割を担っているのでしょうか?
 少なくとも、円卓会議メンバーの一人であると思えます。何故なら円卓会議は、多分に名誉職的なシステムと思えるからです。

 またニーニャは今でも、様々な人々のコンサルタント的な立場にあると考えられます。その事はセルパが、わざわざタカツングから尋ねてきていることや、ノナ氏の相談に乗っていることからも推測できます。 ニーニャの優しい人柄を考えれば、自分を頼ってくる人々を無視はできないでしょう。
 ただし強い力を持つ彼女の能力を考えれば、それ以外に何か秘密の任務があるような気がします。

右上図):セルパとニーニャ 「イバラード物語」より

 ニーニャが政治の表舞台から引退したのは、おじいさんとはまた違った理由があったかもしれません。あるいは何か重要機密を持って、謎めいた住処に住んでいる可能性もあります。それは彼女の裏の顔と言えそうです。そしてコンサルタントを務める姿は、彼女の表の顔かも知れません。
 では、ニーニャが守っているイバラードの重要機密とは何でしょう?
 結局それは、最後まで解けない謎になりそうです。 ただその役目には、彼女の特殊能力が関わっています。次章でお話しする「人払いの力」がそれです。そうした彼女の力を考えると、ニーニャの店のロケーションも納得です。人里離れたといってもさほど辺鄙な所でもない、イバラードでの位置関係が絶妙です。つまり彼女はこの場所で、何か重要な機密を、ただ守っているだけなのかも知れません。


 

(3)最後の謎、ニーニャの特殊能力

 ニーニャの力を知る上で、もう一つ付け加えておきたい事があります。それはバジレリスカとの関係です。
 バジレリスカとは竜の姫君の事。彼女は凄まじい思念の持ち主です。どんな勇敢な人間であっても、彼女の前では瞬時も正気が保てないと言われています。
 ところが井上先生によれば、ニーニャだけはバジレリスカの前でも、冷静でいられると聞きました。

 それは、何故でしょう? そこには、まだ知られていない出生の秘密が隠されているのかも知れません。

 左上図):バジレリスカと竜の長 「イバラード物語」より

 

(4)ニーニャって、たぶんこんな人

 もともとニーニャと言う人は、彼女がごく普通の家庭に生まれていたなら、案外平凡な女の子だった様な気がします。きっと「大きくなったら、保母さんになりたい」と言うような、やさしく堅実な女の子になったでしょう。ですから今のニーニャの店は、そんな彼女がやっと見つけた、心安らぐ居場所なのかもしれません。

 とても印象に残っているのは、「飛行士のカフェ」ニーニャの姿。(このページのトップ画像参照) ニーニャは画面左のカウンターの中にいて、多分ノピサ君らしき人物と話をしています。その隣には、何となくセルパさんらしい人物もいます。
 これを見て思ったのは、ニーニャって人は、人が集まると笑顔でさっと立ち上がり、簡単なお菓子や料理など手際よく造ってしまう人らしいということです。これではまるで、小料理屋の女将ですね!(爆) 大魔女の印象すら感じさせない普通の女の人……それが実は、ニーニャの本当の姿ではないでしょうか。逆に言えば、だからこそニーニャはすごいと思うのです。

下図):ニーニャの店 「イバラード物語」より

 様々な資料を見る限り、ニーニャは暖かで、ごく家庭的な女性にしか見えません。つまり彼女は意識して、普通の女性でいようと心がけている様に見えるのです。でもやろうと思えば大魔女らしく、人々の暮らしを睥睨(へいげい)し、女王様のような暮らしが出来るはずです。その様な魔法使いは何人も居るでしょう。
 ニーニャには、人々と苦楽を共有しようという、強い決意がうかがえます。まあ 先ほどから何度も言う、イバラードの普通が何かはさておいてですが……。

 ちなみに、ニーニャタルーラブラウジーの面倒をよくみているのは、彼女が子供好きという他に、幼い頃の自分を重ねているのかもしれません。優しい彼女は、魔法使いとして大きな潜在能力をかいま見せる二人に、自分のようなつらい体験をして欲しくないと願っているはずです。

 


 上記は当初、小立野大学・公開セミナーに投稿したお話です。後日この投稿に井上先生から貴重なコメントが寄せられました。そこにはニーニャの魔法について驚く事実がありました。そこからは、ニーニャという魔女の抱える矛盾が見えてきます。そしてその事がいっそう、深い陰影を与えている様に思えます。詳しくは次章で。

 

2000年9月3日: 記
2003年9月21日:追記
2006年1月25日:修正